桜涙 ~キミとの約束~
奏ちゃんから連絡が入ったのは、それから少ししてからだった。
「奏ちゃん、今から来るって」
携帯を肩からかけていたバッグにしまってリクに告げると、私の手をしっかりと握ってくれていた温もりが、そっと離れた。
代わりに、リクが持ってくれていた熊のぬいぐるみが渡される。
「じゃ、あとはソイツに守ってもらって」
言って、おどけたリクに、どう返していいのかわからなくて、私は笑んで「そうだね」と返した。
でも……本当は、手を離された事に寂しさを覚えていた。
そして、痛みも。
だけど、それを隠すように私は笑ってみせる。
今の私は、リクの瞳にどんな風に映ってるんだろう。
無理しているように見える?
ちゃんと楽しそうに見えてる?
こんな風に自分を偽るように笑うなんて、まるで……
何かを抱え隠す……リクみたいだ。
もしかしたら、リクも痛みを誤魔化しながら笑っていたの?
そんな疑問が浮かんでしまい、途端にリクの事が心配になってくる。
けれど今は、年に一度しかない夏祭りを、リクと過ごす時間を大切にしたいから。