桜涙 ~キミとの約束~
「五千円!? 夏祭りで使う金額じゃないだろう……」
驚きお叱りモードに入った奏ちゃんに焦る私。
リクは奏ちゃんのお説教に慣れてるせいか、どこ吹く風といった感じで私を盾に口笛を吹いている。
というかリクってば、何も二人合わせた金額で言わなくてもいいのに。
一人で使った額を言うより大きく感じるじゃないの、なんて心の中で愚痴りつつも、私は内心ホッとしていた。
三人の空気感が、いつもと一緒だから。
奏ちゃんが来るまで、少し心配だったのだ。
私たちの空気が、ギクシャクしてしまったらどうしようって。
だけど、この分なら大丈夫そうだと安心した。
「奏ちゃん、ご飯は食べてきたの?」
「いいや、食べないで来たよ」
「よーし、じゃあオレとかき氷の早食い競争しよう」
「出た。夏祭り恒例、奏ちゃんとリクの一騎打ち対決」
私が笑うと、奏ちゃんは困ったような笑みとともに溜め息を吐く。
「今年はかき氷か……って、僕的には空きっ腹にかき氷より──」
「去年に続き、今年もオレが勝利の栄光を掴むぜ! うなれ、オレの早食い百烈拳!」
「なんだよその技。それより、かき氷じゃないので頼むよ陸斗」
「ダメでーす。さあ、行こうぜ奏チャン!」
「頼む! せめて広島焼きにしてくれ!」