桜涙 ~キミとの約束~
リクはさっきとは別人のように、プリントの英字に目を走らせる。
けれどさっそくつまずいたリクが眉を寄せれば、親切にアドバイスする奏ちゃん。
夏祭りの時にも思ったけど、なんだかんだとそれぞれに事情があるとしても、こうして一緒にいれるのが嬉しい。
つい顔を綻ばせたら、奏ちゃんが合わせるように微笑んで。
「どうした? なんか嬉しそうだけど」
問いかけられて、私は笑みを濃くした。
「うん。退院できて、二人とまたこうして一緒にいれて嬉しくて」
「……そうか」
優しく微笑む奏ちゃん。
「小春はピュアだよなー。昔っからさ。はらっぱに雪男が出たって嘘も本気で信じてたし」
雪男……
そういえば、小学校高学年の頃にそんな話をリクにされてすっかり騙された事があったっけ。
「あれはリアルに設定作った陸斗も悪いだろ。でも、素直なのは小春のいいところだよ」
フォローありがとう奏ちゃん。
昔から変わらない奏ちゃんの上手なフォローに心の中で感謝して、私は再び宿題と向き合った。