桜涙 ~キミとの約束~


それから──

結局、リクはオレンジを選び、私は桃で奏ちゃんがグレープフルーツを食べた。

人気というだけあって、とても美味しかったゼリー。

宿題も無事に終わって、お土産のゼリーもゲットして。

本当なら、憂うことなんて何もないはずなのに……


リクの話が、私の頭から離れない。


「ごめんな、小春。本当は家まで送ってやりたかったんだけど」

「いいよ。お手伝いがあるのに、時間作ってくれてありがとう」

「ホントホント。助かったよ奏チャン。またヨロシクお願いします!」

「よろしくお願いしないようにしてくれよ、二人共」


玄関先で疲れたような溜め息をつかれて、私は苦笑いする。


「アハハ……頑張ります」

「じゃ、またね奏チャン」


軽く手を上げて歩き出したリク。


「ああ。気を付けて」


奏ちゃんが頷いて、私が手を振って歩き出そうとした時。


「小春」


ふいに、奏ちゃんに名前を呼ばれて振り返った。


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