桜涙 ~キミとの約束~
私を見つめる奏ちゃんの瞳が優しく細められる。
「あとで、電話するよ」
「……うん」
彼の小さな約束に曖昧な笑みで頷くと、再び奏ちゃんに手を振ってリクの背中を追った。
奏ちゃんの私への接し方は三人でいる時は普通でも、二人としての関係はまだ少しおかしいままだ。
お母さんの話をしてくれた日から、たまに見せられてた怖い雰囲気で接してくる事はないけれど、付き合っているように接してくるのは変わらない。
きっぱりと拒絶できない私もいけないのはわかってる。
でも……話を聞かされてしまったせいで、以前よりも奏ちゃんを傷つけないように気を使ってしまうのだ。
どうすれば、奏ちゃんの心を楽にしてあげられるんだろう。
いい方法が思い浮かばず、私はリクに気づかれないように小さく息を吐き出した。
けれど──
「どうした?」
「あ……」
どうやら、聞かれてしまっていたようで数歩前を歩いていたはずのリクは、いつの間にか私の前に立ち顔を覗き込むようにしていた。