桜涙 ~キミとの約束~
✿寂しい背中
「今日は親父、帰りが遅いらしいから話すにはちょうど良かった」
私がクッションに腰を下ろすと、リクはそんな風に言いながら自嘲気味に笑った。
リクの部屋に入るのはいつぶりだろう。
確か中二の頃にお邪魔して以来……?
家具の位置はちょっと変わってるけど、家具そのものは見覚えのあるものばかりだ。
20インチくらいの液晶テレビに、シングルサイズのパイプベッド。
壁に設置されているクローゼットには、中学の頃と同じように、高校の制服がかかっている。
そんなに大きくはない四角いローテーブルには、音楽雑誌と……リクが用意してくれた、氷で冷やされたオレンジジュースの入ったグラスが二つ、並んでいた。
リクはベッドを背もたれにして座っている。
彼の後ろに見える窓はエアコンが効くまではと開けられていて、ぼんやりと、時折風で揺れる青いカーテンを見ていたら、リクの声が秘密を漏らした。