桜涙 ~キミとの約束~
「狂ったように、オレにやめてって言いながら……母さん、は……」
そこまで話して、リクは言葉に詰まったように黙ってしまう。
それ以上言わなくても、わかった。
きっとリクのお母さんは、そのまま……
ベランダから飛び降りて、命を絶ったんだ、と。
「オレのせいなんだよ。母さんが死んだのは、オレのせいなんだ」
痛みをこらえるように微笑んだリクに、私は首を横に振った。
「オレの存在が……母さんを不幸にした」
まるで、生まれてきた事を否定するような響きに、私は泣きそうになる。
「きっと、お袋もそうだ。オレを養子になんかしたから、病気になった。だから……」
リクの瞳が、不安げに私を見つめて。
私はハッキリとかぶりを振って否定してみせた。
「違うよリク。前にも言ったでしょ? 私はこうして、退院だってしたんだから」
そうだよ。
リクがいてくれたから、私は頑張れた。
不幸どころか、今こうして過ごしている日常は、駆けつけて支えてくれたリクがくれたものでもあると思っている。