桜涙 ~キミとの約束~
「……そっか。実はさ、オレも歩きたい気分なんだ。ちょっと遠回りしよっか」
「うん」
私が頷くと、リクは柔らかい笑みを浮かべる。
そうして、どちらともなく歩き出した。
さっきは一人分しかなかった影が、二人分になり並んでいる。
昔はかげふみして遊びながら帰ったなぁ……なんて考えていたら。
「……小春」
リクに名前を呼ばれて、影に落としていた視線をリクへと向ける。
「ん?」
「ありがとな」
微笑んだリクの表情が、どこか切なく見えるのは夕日のせいだろうか。
笑むことで返事をした私に、リクが優しく目を細めて。
私たちはとりとめもない会話をしながら、夏の夕暮れ道を歩き……
空の色が紺色に変わった頃、私は再びリクに送られて自宅前までやってきた。
散歩で気が紛れたのか、リクからは寂しい気配が消えたように見える。
だから今度こそ、そのまま見送るつもりだった。
──けれど。