桜涙 ~キミとの約束~
残された私たちは、身動きも取れず再び訪れた沈黙に縛られていると……
「……苦しませたいわけ、ないに決まってるじゃないか……」
ふいに、奏ちゃんが声を漏らして。
「奏ちゃん……?」
「でも、どうしようもないんだ。もう、僕には……」
独り言のように零した彼は、手が白くなるほどに強く拳を作る。
その顔には、追い詰められたような焦りと苦しみが見えていた。
「小春……お願いが、あるんだ」
奏ちゃんの表情はとても真剣で。
私は何も答えず、ただ彼の言葉の続きを待つ。
夏の生ぬるい風が、私たちの間を吹き抜けてると、奏ちゃんは言った。
「急がなくていいから、幼なじみの殻を破って僕を見て欲しい」
そして、いつか交わした約束を果たそう、と。