桜涙 ~キミとの約束~


「小春ちゃんはメイドさんやってよ」

「えっ、なんで私が」

「小春ちゃんってなんか小動物っぽくて可愛いし、男のお客さんが増えると思うんだよなー」


新谷はタレ目がちな優しい瞳をニッコリと細め言葉を続ける。


「まあ、体調とか心配なら呼び込み係で立ってるだけでもいいしさ、とりあえず考えといて」

「う、うん、わかった」


頷くと、新谷は「よろしくなー」と嬉しそうに白い歯を見せた。

私の病気の事は担任の先生を通してクラスのみんなが知っている。

私は最初、みんなに気を使わせたくないからと黙っていようかとも思ってたんだけど、友達を思いやり、助け、支え合うというのも大切な事だからと先生が話すことを勧めてくれて。

それで、始業式の日に私の口から病気の事を話させてもらっていた。

以来、今日までに何度かクラスメイトの労わりと心の温かさに触れ、病気であっても幸せだと感じている。

今もそうだ。

何気ない新谷の気づかいの言葉に、私は感謝の気持ちでいっぱいになっていた。


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