桜涙 ~キミとの約束~
「ありがとう新谷。体の事気にかけてくれて」
「いやいや、クラスメイトだし当然っしょ。あー、でも、この話し美乃ちゃんにして俺の良さをアピールしてくれてもオッケーだからなー?」
茶目っ気たっぷりにウィンクをした新谷。
私はそんな彼の言葉と仕草に笑って「善処します」と告げると、教室の扉のところで待っていてくれていたよっちんの元へと急いだ。
そして、よっちんと二人で階段を下りながら、新谷に頼まれたアピールの件を話すと、彼女は呆れたように小さく息を吐き出した。
「して当然の事をアピールされてもね」
「でも、出来ない人だっていると思うし」
「しない人よりはマシでしょうけど、あの人の場合は下心があるように見えるから」
よっちんの言葉に否定できない私がいて、苦笑いを返しながら靴を履き替える。
昇降口から一歩外に出ると、むわっとした熱気がお出迎えしてくれた。
校舎内も暑いと感じるけど、外の気温に比べたら全然マシだと思わされる。
まだ少し高い位置にある太陽の光を避けるように、よっちんと二人で日陰を歩きながら校門へとなだらかな坂を下っていると──
「小春」
風紀委員の腕章をつけた奏ちゃんに声をかけられた。
優しい笑みを浮かべた奏ちゃんの手には、風紀委員の記録表。