桜涙 ~キミとの約束~
「……でもさ、ちょっと珍しいね」
「なにが?」
「いつも素早く華麗に逃げるリクが、逃げないなんて」
新谷に負けず劣らず面倒な事が好きじゃないリク。
いい言い方をすれば自由を愛しているわけだけど、リクは特にこんなふうに細かい作業は好きじゃない。
体を動かしたりする方が好きな人なのだ。
「文化祭だからね」
リクは、模造紙にペンを走らせながら話す。
「オレのせいで誰かが困るのは好きじゃないんだ」
「そっか」
リクの答えに、私は顔を綻ばせた。
人の為にと逃げないで向き合う姿は、とてもリクらしい。
「リクのそういうところ、好きだな」
自然と出た言葉だった。
純粋にそう思って口にしただけ。
でも、リクは少し驚いたような顔をしていて──