桜涙 ~キミとの約束~
「……なんだよ、その不意打ち」
ほんのりと、頬を染めていた。
こんなリクは見たことなくて、心臓が、トクントクンと騒ぎ始める。
自分は私に簡単に愛してるとか言うくせに、そんな姿を見せるなんて、それこそ不意打ちだ。
途端に変な空気になってしまって、私たちはちょっとぎこちないまま作業を進めていく。
そして……下書きが終わって、着色に入ろうとした時だった。
「好きだなんて、簡単にオレに言っちゃダメだよ」
リクが、淡く微笑みを浮かべながら言った。
「小春はオレを簡単に幸せにできる。だから、ダメだ」
悲しい、寂しいお願いに、私は眉を情けなく寄せてしまう。
「幸せになっちゃいけないなんて、誰が言ったの?」
「……オレの過去」
リクの言葉に、私の手は完全に止まってしまった。
逆に、リクの手は休まずに動いている。
けれど、その行動はまるでリクの中の痛みを隠すような行動にも見えて……