桜涙 ~キミとの約束~
✿文化祭
「執事&メイド喫茶でご休憩はいかがですかー!」
文化祭初日。
賑わう校内を練り歩き、私は声を張り上げる。
手にはクラスメイトお手製の【執事&メイド喫茶】と書かれたプラカードとメニュー。
私はこのメニューを文化祭に訪れてるお客さんたちに見せて、気に入ってもらえたら教室まで案内するという役目を担っている。
「とっておきの笑顔で呼び込みよろしく」と新谷に頼まれているんだけど、呼び込みを始めてからかれこれ一時間弱。
さすがに笑顔もひきつってきている気がする。
それとは逆に、このメイド服で校内を歩き回るのがちょっと恥ずかしいのは、時間が経っても変わらないままだ。
早く交代の時間にならないかなと願いつつも、別の階に向かおうとした時だった。
「可愛いメイドさん、はっけ~ん」
他校の制服を着た男子生徒二人が私の前に立ち、顔をニヤつかせていた。