桜涙 ~キミとの約束~
天の助けとはまさにこの事。
この文化祭で奏ちゃんは、風紀委員の仕事として校内の警備を担当しているのだ。
「奏ちゃん!」
「……小春?」
奏ちゃんは私の格好に驚いたのか、僅かに目を見開いたかと思えば続いて頬を赤らめた。
「そ、そうか。メイド服で呼び込みだったよな。似合うよ」
「あ…ありがと……」
照れた素振りで褒められて、何だか私まで照れてしまう。
……って、そんな場合じゃなかった!
「奏ちゃん、あの──」
「ああ、わかってる」
奏ちゃんは私に微笑みかけ、けれどすぐにその表情を引き締めるとリクたちの方へ視線を動かした。
「何の騒ぎかな? どちらが原因にせよ、これ以上問題になるようなら先生に報告しないとならない」
「あー、奏チャン。オレは悪くないからな?」
「それは当事者全員の話を聞いてから決めるよ」
キッパリと言い放った奏ちゃん。
とりあえず手を離すようにリクに言って、リクが素直に従い二人を解放すれば……
「すんませんでした! 大人しく文化祭を楽しんで来ま~す!」
苦笑いを浮かべ謝ると、逃げるように走り去って行った。