桜涙 ~キミとの約束~
「大丈夫かい? 具合悪くなってたりするんじゃ……」
「ううん。今は平気だよ」
首を横にふって見せると、奏ちゃんは良かったと告げてから信号機に視線を移す。
続くように私も正面を向いた──その時。
「……あれって……」
きっと、奏ちゃんも私と同じものを見ているんだろう。
短く言葉を発して、横断歩道の向こう側の様子を伺っていた。
その横で私は何も言葉に出来ず……
金縛りにあったように動けないままで
私たちに気づかずに
女の子と歩く
楽しそうな……
リクを、見ていた。