桜涙 ~キミとの約束~


「……小春……」


奏ちゃんの声が聞こえた。


「信号、青だよ」


冷静な声だった。

その声に促され、私は横断歩道を渡る。


足元で繰り返される白い線。

渡りきって、歩きながらリクが歩いていた道を目で辿る。


マンションの前にはもう誰もいない。

リクが出て来る気配もない。


「……今のは、リクだよね?」


人違いだと、言われたかった。

奏ちゃんに言ってほしかった。

似ていたけど、別人だよって。


でも……


「そうだね」


奏ちゃんは、口角を少しだけあげて、頷いた。


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