桜涙 ~キミとの約束~
「お母さん、その写真って、どこ?」
「ええっと……ああ、あの公園ね。前に住んでいた家の方よ」
「前って……転校する前の?」
「そうそう。たまにしか行かない公園だったけど……そういえば、小春は一時期この公園によく行きたがってたっけ」
「そう、なの?」
「そうよ。家の近所の方がお友達もいっぱいなのに、どうしてかそこに行きたがってて」
お母さんは考え込むように首を傾げる。
「なんだったかしら……あ、そうだ。"一緒にいるの"って何度も言ってたわ」
間違いないと、感じた。
桜の木と、約束の言葉。
もしも、そこが約束を交わした場所なら。
……私は本当にそこで、奏ちゃんと出会ったの?
そう、これは以前も感じていた矛盾だ。
初めて会ったのは、転校してからのはずなのに……と。