桜涙 ~キミとの約束~


「お母さん、その写真って、どこ?」

「ええっと……ああ、あの公園ね。前に住んでいた家の方よ」

「前って……転校する前の?」

「そうそう。たまにしか行かない公園だったけど……そういえば、小春は一時期この公園によく行きたがってたっけ」

「そう、なの?」

「そうよ。家の近所の方がお友達もいっぱいなのに、どうしてかそこに行きたがってて」


お母さんは考え込むように首を傾げる。


「なんだったかしら……あ、そうだ。"一緒にいるの"って何度も言ってたわ」


間違いないと、感じた。


桜の木と、約束の言葉。


もしも、そこが約束を交わした場所なら。


……私は本当にそこで、奏ちゃんと出会ったの?


そう、これは以前も感じていた矛盾だ。


初めて会ったのは、転校してからのはずなのに……と。


< 321 / 494 >

この作品をシェア

pagetop