桜涙 ~キミとの約束~
尋ねれば、奏ちゃんは『クリスマスイヴなら』と言った。
前日まではお店のお手伝いで忙しい。
元々パーティーをする予定があったから、その日なら確実だと。
だから私はその日でかまわないと、お願いした。
どこに行くのかと聞かれたけど、私は内緒だと言って誤魔化して。
楽しみだと嬉しそうに言った奏ちゃんに心の中で謝罪してから、通話を切った。
机の上に視線を向ければ、いくつか並べられてるフォトフレーム中におさめられた一枚の写真が目に止まった。
それは、一年前のクリスマスに撮ったもの。
私を真ん中に挟み、カメラに向かって笑う奏ちゃんとリク。
リクの痛みも、奏ちゃんの孤独も、私の病気も、まだ何も知らずに笑っていられた私の笑顔は、とても幸せそうで。
瞼を閉じて、確かにあった時間を思い返せば……
その幸福感がわずかに蘇り、私の頬が緩む。
今年もどうか、少しでも幸せで楽しいクリスマスになりますように。
願いを胸に、私はゆっくりと瞼を持ち上げた。