桜涙 ~キミとの約束~
実は、奏ちゃんにはまだ目的地をきちんと告げてはいなかった。
出発時に「まだ内緒なの?」と聞かれたけど、私は「奏ちゃんと見たいものがある」としか伝えてない。
商店街を抜け、踏切を渡る。
古めかしいお寺の前を通り過ぎ、角を右に曲がれば……
「あ……ここだ」
ようやく、目的地である公園に辿り着いた。
そこは想像していたよりも広い公園。
数人の子供が楽しそうに走り回るのを見ながら私は、奏ちゃんと並んで公園へと足を踏み入れた。
「それで、小春が見たいものって?」
尋ねられて、私は視線を公園内にめぐらせ目的の桜の木を探す。
小さめの池に、アスレチック。
砂場の傍には大きな滑り台。
それらを視界に映していると──
ふいに、見覚えのある景色を見つけた。
私はお母さんから借りた写真を鞄から取り出して、景色と見比べる。