桜涙 ~キミとの約束~


「言葉で、行動で、陸斗は小春の色んな表情を引き出す」


リクが……私の、表情を?

そんなの、考えたことも意識したこともなかった。


ただ、確かなのは。


「小春は……陸斗の事が、好きなんだろう?」


──そう。

私は、いつの間にか……リクの事を好きになっていた。

幼なじみとして、いつも一緒にいたリクを。


……もう1人の幼なじみの奏ちゃん。

リクとは違うけど、私の大切な人だ。

大切だから、傷つけたくなんかない。

けど、大事な話をしているからこそ、自分の気持ちに嘘をつく事、奏ちゃんに嘘をつく事をしたくなくて。

声にはせず、私は静かに首を縦に振った。

途端に、奏ちゃんの顔が悲しげに歪む。


「……おかしいんだよ。僕は、陸斗なら許せると思ってたんだ」


ハハハと、泣きそうに眉を寄せて、力なく笑って。


「でも……ダメだった。小春が僕から離れてしまうなら、陸斗だって……いや、陸斗だから、余計に許せないんだ」

「リク、だから?」


遠慮がちに聞くと、奏ちゃんは口を僅かに開く。

けれど、奏ちゃんは言葉に迷ったように沈黙し……少しの間のあと、教えてくれた。


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