桜涙 ~キミとの約束~
今の奏ちゃんに何を言えば正解なのかわからない。
奏ちゃんの欲しい言葉も、わからない。
だから私は、奏ちゃんの心に届きますようにと祈り、自分の気持ちを伝える。
「奏ちゃんは、ひとりぼっちになんかならない。私も、リクもいる。大人になっても、いつか住んでる距離が今より遠くなっても、喧嘩しても嘘ついても……私とリクは、奏ちゃんの味方で、幼なじみだよ」
信じて。
私たちが過ごした時間を。
結んできた、絆を。
真っ直ぐに奏ちゃんを見つめ、言葉を待った。
すると、奏ちゃんの声が「小春」と私を呼び、悲しみを帯びた瞳を、少しだけ細める。
「ありがとう。でも僕は、身勝手に小春を縛り付けようとしたんだ。汚くて、最低だ。嫌われても、ひとりになっても当然の事をした。その覚悟だって、していたんだよ」
ひとりぼっちを恐れている奏ちゃんが、そのリスクをおかしてまで必死になった。
その気持ちを想像すると、嬉しくて、寂しくて、悲しくて。
胸が張り裂けそうになる。
「嫌いになんて、ならないよ」
なれるなら、とっくになっている。
私にとって奏ちゃんは、そんな簡単なポジションにいないのだ。
けれど……