桜涙 ~キミとの約束~
✿夢のつづき
──ふわり。
冷たく柔らかい風に乗って舞い降りたソレが、奏ちゃんの手を握っている私の手に落ちて溶ける。
ふり仰げば、鈍色の空から白い雪の花が舞い降りてきていた。
奏ちゃんも空を見上げ「降り始めたね」と口にする。
そして、ゆっくりと手を離すと、さっきよりも柔らかくなった表情で私を見た。
「よろしく……とは言ったものの、すぐに今までと同じようにはできないと思う」
ごめんな、と続けて謝る奏ちゃんに、私は首を縦に振る。
奏ちゃんの紡いだ言葉は寂しいものだけど、それは当然のものだった。
関係をやり直す──と言っても、そんな簡単に切り替えられるものじゃない。
声にし、気持ちを教えてもらえても、積み重なったわだかまりがすぐに解けるとも思っていない。
時間はかかってしまうだろう。
それでも、また笑い合えるなら。
「いいよ。奏ちゃんのペースで」
伝えると、奏ちゃんの瞳がメガネの奥で微笑む。
「見つめ直すよ。小春のくれた言葉と、陸斗と築いてきた関係を信じて」
三人が共に過ごしてきた時間を、思いを、絆を、未来にむけて、また結びなおそう。