桜涙 ~キミとの約束~
✿見つけたもの
ドンッ、と肩がぶつかる。
「ごめんなさいっ」
慌てて謝ると、スーツを着たおじさん一瞬だけ足を止めた。
けれど、急いでいるのか、無言で私を一瞥すると歩き去ってしまう。
クリスマスイヴという日の効果で、いつもより人の多い地元の駅前。
その中を、歩きながら携帯を見ていた私は、当然の如く人にぶつかってしまった。
というより、ぶつかってしまい危ないという事を失念していたくらい、携帯を手にしてディスプレイ画面の確認ばかりしていた。
私は、またぶつからないようにと道の端に寄る。
リクから折り返しの電話はまだない。
一応メールもしておいたけど、その返信もないままだ。