桜涙 ~キミとの約束~


小さく白い息を吐いた。

足元には、本格的に降り始めた雪が落ちていく。


溶けた雪で濡れた道路。

奏ちゃんとは駅についてすぐに別れている。


「また明日」とはお互い言わなかった。


奏ちゃんが明日のパーティーを望めない心境だったらと考えたら、私からは言えなくて。

……私は、今日、これからの時間をどんな風に過ごし、乗り越えて明日を迎えるのだろう。

どんな気持ちでパーティーに参加するんだろう。


不安を紛らわせるように駅前の景色に視線をめぐらせてみる。

雪雲のせいかクリスマスイルミネーションの輝きのせいか、少し明るく見える夜空の下を行き交う人々はどこか幸せそうだ。

空から降る雪に視線を向けて口元を綻ばせている人もいる。

嬉しそうに手を伸ばす女性の隣りには、恋人らしき男性の姿。


無意識に、二人の姿がリクと百瀬さんに変換されて、私の胸が泣くように痛んだ。


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