桜涙 ~キミとの約束~
今日、リクは百瀬さんと一緒かもしれない。
それは電話をかける前に予想していた。
もしもそうだとしたら、百瀬さんを優先してもらってかまわない。
悲しいけれど、淋しいけれど。
隣りにいるのが私だったら嬉しいのにと、羨んでさえしまうけれど。
それでも、リクの幸せな時間を奪う事はしたくない。
だから、私の話は、その幸せな時間のあとでも構わない。
ただ、もしも今まだ時間があるなら、会って、ちゃんと目を見て確認したいんだ。
もしも本当にリクが約束の少年であったとした場合、それを今まであえて明かさずにいたのなら、リクは本当の事を話してくれないかもしれないから。
何か理由があるにしても、電話越しの会話だけじゃ、私はきっと──僅かな真実も見抜けない。
携帯を持つ手にキュッと力を込める。
そして、桜の花びらが降りしきるあの公園で、私を振り返ろうとした少年の姿を頭に思い描いた時。
携帯が、音をたてながら震えた。