桜涙 ~キミとの約束~
ディスプレイに表示された相手の名前を見て、私の心臓が跳ね上がる。
少しの緊張と不安。
やっとリクから連絡が来た事の安堵感。
それらを胸に、私は通話ボタンを押した。
携帯を耳にあてると、すぐにリクの声が聞こえてくる。
『あ、小春? ごめん。携帯手元になくて気づかなかった』
一瞬、ヤキモチ妬きの私が起き上がり、どうして手元にないのか勘ぐってしまう。
けれど、それをどうにか心の奥に追いやって「ううん」と声を返した。
「私こそ、忙しいのにごめんね」
『忙しいっていうか……まあ、それもひと段落ついたから大丈夫。で、メールも見たけど、話しがあるってなに?』
早速聞かれて、私はひとつ深く息を吸い込んでから答える。
「あの、できれば会って話したいんだけど、今日は……難しいよね」
『今日? んー…』
考える声。
やっぱり、いきなりなんて迷惑だったと私は申し訳なく思った。
でも、もしもあの少年がリクかもしれないと思ったら、早く知りたい気持ちが勝ってしまう。