桜涙 ~キミとの約束~
思えば、何かの為にこんなに必死になったのも初めてかもしれない。
もちろん、努力した事はいっぱいある。
全力で挑んだ事もある。
だけど、自分の欲求を満たすように必死な気持ちになるのは、初めてだ。
……それでも、わがままに欲求を通すことはしたくない。
リクが困るというなら尚更。
「ご、ごめん、急すぎだよね。百瀬さん優先でいいの」
ちょっと聞きたい事があるだけだから、時間取れそうなら教えて?
そう続けるはずだったけど、それはリクの声で途切れてしまう。
『百瀬って……えっ、もしかしてバレてる?』
何がバレているのか。
それはきっとリクと百瀬さんの関係。
私の心が、深く沈んだ。
「そ、うだよね。うん、バレてるかな」
わざと明るい声で告げる。
多分それは、自己防衛だ。
今にも泣いてしまいそうなのを、堪える為の。