桜涙 ~キミとの約束~
「どうして泣いてるの? かなしいの?」
薄紅の花が、風に揺れ舞い散って。
「わたし、こはる。あなたはどこのおうちのこ?」
「もう、おうちはなくなるんだ」
「どうして?」
首を傾げると、少年が涙混じりの声で話す。
「ぼくのお母さんが、いなくなっちゃったから」
「迷子になっちゃったの?」
少年はうずくまったままの首を横に振り、告げた。
「天国にいっちゃった。ぼく、ひとりぼっちになっちゃった」
「ひとりじゃないよ」
「ひとりだよ」
「こはるがいる。そしたら、ひとりじゃないでしょ?」