桜涙 ~キミとの約束~
✿幸せに手を伸ばして
重い瞼をゆっくりと持ち上げる。
ぼんやりとした薄暗さの中、心配そうな瞳で私を覗き込む彼の姿が見えた。
「……小春?」
もう、何年も近くで聞いてきた声。
気遣うようなリクの声に、私は瞬きをして視界を少しクリアにする。
白い天井に簡素なベッド。
見覚えのある光景に、ここが病院で、私は倒れてしまったのだと予想した。
「大丈夫?」
リクに問われ小さく頷くと、彼の瞳に安堵が浮かんだ。
「良かった……」
病室内に零れたリクの声。
表情には僅かに笑みが滲んでいて……
蘇った記憶の中の、小さなリクと重なって。
私の中で、ストン…と、何かが落ち着いたのがわかった。