桜涙 ~キミとの約束~
「元気に、か……」
……そうだよね。
また頑張って退院して、来年こそ病院じゃない場所で楽しいクリスマスを迎えよう。
一人頷いて気持ちを前向きに切り替えた時だった。
コンコンとノックの音が聞こえて。
「はーい?」
声を返せば、首元にくるくるとマフラーを巻いたリクが扉を開けて入ってきた。
「彼氏、見参」
ニッコリと笑って言ったリク。
彼氏というワードに、気恥ずかしさを覚えた私は、言葉に詰まって照れ笑いを浮かべるのみとなってしまって。
「あれ? もしかして、恋人になったと思ってるのオレだけ?」
目を丸くして首を傾げたリクに、私はかぶりを振った。
「そ、そんな事ない、けど」
ないのだけど、今まで幼なじみだったリクとの関係が、彼氏という別のものに変化したのが、まだちょっと馴染まなくて正直戸惑ってしまう。
それがどうしても態度に出てしまう私に、リクが苦笑いを浮かべた。
「ま、オレもその辺ちゃんと言ってないもんな」