桜涙 ~キミとの約束~
まだ、早い気はする。
だけど、黙っていて、何かで知ってしまう方が奏ちゃんを傷つける気がして。
意を決して口を開く。
「……あの、ね、奏ちゃん──」
「来年は、陸斗と二人で過ごしなよ」
「え?」
私の声を遮って、奏ちゃんはそっと笑みを浮かべた。
「ほら、僕は受験だし」
「あ……そっか……」
忘れていたけど、来年の冬は奏ちゃんは三年生で忙しい時期だ。
でも、中学の時はクリスマスくらいは息抜きしようと言ってやっていた。
だから、それだけが理由じゃない気がして奏ちゃんの目を見れば……
募らせた寂しさをひた隠すように微笑んで。
「その頃には少し、祝福出来ると思うから」
奏ちゃんの言葉に、彼は言わずとも私とリクの事を察していたと気付く。
そして、そこにある想いに、私は何も声に出来ず……ただ、ひとつだけ頷いた。