桜涙 ~キミとの約束~


だって……


「ねぇリク、梢ちゃんから返事が来ないの」


リクに買ってもらった可愛いレターセットで書いた、梢ちゃんへの手紙。

看護士さんに渡してもらえるように頼んで、ちゃんと渡したよと報告もされた。

だけど……


返事は、まだ来ていない。

つまり梢ちゃんはそれだけ今、苦しい状況にいるのだ。


私は声をかける事もできず、早く良くなるようにと祈る事しかできない。

梢ちゃんが私にしてくれたように、励ます言葉もかけられない。


「苦しんでる友達に、何もしてあげれない」


なんて役たたずなんだろう。


「人はさ、万能じゃないんだ」


そっと諭すような、どこかあたたか味のある声でリクが言葉を紡ぐ。


「今、梢ちゃんの苦しみを和らげてくれるのは、お医者さん。じゃあ、小春は?」

「私、は……」


今、私に出来る事は、あまりにも少ない。

声をかけられないから、リクが提案してくれたように手紙を書くしか──


「あ……そうか」



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