桜涙 ~キミとの約束~
……むっ、むりムリ無理!
そんな心の準備させられても、無理だよ!
だってだって、この前の分って事は、キスでしょう?
あれから話題に出なかったから冗談だと思ってたのに、まさかここでまた出てくるなんてっ。
ブンブンブンと勢いよく首を横に振ると、リクが不服そうに唇を尖らせた。
「なんでダメ~?」
「だって、まだ早いっていうか」
「早くないよ。オレにとっては遅いくらいだ」
言って、リクは私の髪に手を伸ばし、愛おしむように触れる。
「ずっとずっと小春に伝えたくて、でもできなくて。触れたくても、冗談にしかできなかった」
そして、切なくなるような優しい微笑みを向けられて。
「少しくらい急いだって、バチは当たらないだろ?」
そっと、リクの腕の中に閉じ込められる。
私の心に届けられたリクの想いが心に染みて、僅かに頷きかけたけど。
でもやっぱり……
「どんなに深呼吸しても、多分、無理」
今はまだ、リクの事を好きだという気持ちで精一杯で。