桜涙 ~キミとの約束~
受け入れがたい現実を前に、私は首を横に振る。
「でも……文化祭に来てくれた時は、あんなに……」
そうだよ。
梢ちゃんはあんなに元気に文化祭を楽しんでた。
いっぱい笑って、ケーキを美味しそうに食べて。
あんなに、あんなに笑顔を見せてくれていたのに。
「あの時、体調は良くなかったんだよ。でも、本人がどうしてもと希望した外出でね」
当日、せめて少しでもいい状態で出られるようにと努力し、私に会いに行ったのだと先生は教えてくれた。
そして、悔しそうに眉を寄せて、けれど心臓に限界がきてしまったのだ……と。
ショックで、言葉が出なくなる。
涙も零れない。
今ある現実が、梢ちゃんが亡くなってしまった事が、信じられなかった。
「今はご家族がお別れをしているから、落ち着いた頃に梢ちゃんに会ってあげなさい」
きっと彼女も喜ぶよ。
そう言われて、私は頷くことしか出来なかった。
立ち去ることも出来ず、ご家族の悲痛な泣き声が聞こえる中、先生を見送っていたら……
「小春?」
リクの声が聞こえて。
視線を動かし、廊下に立つリクの姿を見た瞬間。