桜涙 ~キミとの約束~
「……リクッ」
今までの金縛りが嘘のように、私の足が彼に向かって動き出した。
そのまますがるようにリクの腕を掴むと、リクが驚いて目を丸くする。
「どうした?」
「こ、ずえちゃんが……」
亡くなってしまった。
その重すぎる言葉を音に出来ず、口をつぐんだ時だった。
「小春ちゃん」
聞き覚えのある声に名前を呼ばれて視線をやる。
そこにいたのは、看護士の瀬戸さんで。
「はい、これ」
彼女は、青空によく似た色の封筒を私に差し出した。
そして──
「お返事よ」
告げて、私の手に持たせると微笑みだけを残して歩き去っていく。