桜涙 ~キミとの約束~


「辛いな……辛いよな……」


それは、心に激しい痛みを感じているような寂しい声色で。


不意に……小さな頃、膝を抱えて泣いていたリクを思い出した。


そう、だった。

リクは、失う痛みを知っている。


大切な人を、失う辛さを。


こんなにもひどく激しい心の痛みを、あんなに小さな体で受け止めていたんだと知って、私の胸がギュッと締めつけられる。

そして……


「今度はオレが支えるから。ずっと、一緒にいるよ」


誰かが一緒にいてくれるという事に、大好きな人が傍にいてくれる事に、心がじんわりと救われていくのを感じていた。



それから、しばらくの間


私はリクの腕に包まれ、涙し……



梢ちゃんの死を、必死に受け入れようとしていた。



けれど、ようやく少しだけ受け入れられたのは



彼女の葬儀が行われた翌日の事だった──‥









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