桜涙 ~キミとの約束~


実は、バチスタ手術の話は移植登録の話の際に聞いていた。

それまではリクと同じようにその手術で良くなるのでは、と考えていたんだけど、実際は、バチスタ手術をしても完治するわけではなく、移植までの時間を少し伸ばせるものらしい。


リクにもかいつまんで説明すると、彼の肩が元気をなくすように下がる。

表情も同じように落ち込んでいた。


「……大丈夫だよ、リク。ね?」


多くは語らずに微笑むと、リクは眉を寄せたまま微笑み返してくれる。


リクが笑ってくれる。

それだけで、私は少しずつ前を向けるんだ。

リクがもっともっと笑ってくれるように、元気になろう。


……そう、思うのだけど。

私の心に体がついてきてくれないのが現状だ。


あとどれだけ強く思えば病は気からの効果が発揮されるのだろう。

あとどれだけ笑顔でいれば、体が元気になるのだろう。


結果は、いつになったら出るの?

わからない。

でも……


リクの前では、たくさん笑っていようと心に決めている。


< 424 / 494 >

この作品をシェア

pagetop