桜涙 ~キミとの約束~
バスが発車して、車窓の向こうには夕暮れよりも夜に近い景色が流れていく。
過ぎ行く街の灯りをなんとなく見ながら、オレは小春のことばかり考えてた。
本当は、前みたいに面会時間ギリギリまで小春の傍にいたい。
でも、小春の担当医である大塚先生にも言われてる。
『今の小春ちゃんはとにかく安静にしていなければならないから、負担をかけないように君も気をつけてあげてください』
……それくらい、いきなり苦しんだあの日から、小春の容態は悪化してしまった。
面会も本来は家族のみ。
でも、オレは小春の家族の厚意で面会を許されている。
会いに行けば、小春は嬉しそうな表情をするけど……
どれも、以前の小春よりは力のないものになっていた。
会話も以前より辛そうで……
弱っている小春の姿を見ているオレは、毎日が不安で仕方なかった。
小春はオレといて不幸だと思ったことはないっていってた。
でも、実際小春はどんどん悪くなってる。
しかも、オレが小春とちゃんと向き合おうとしてからだ。
どうしたって、オレが影響しているように思えて仕方ない。