桜涙 ~キミとの約束~


バスが発車して、車窓の向こうには夕暮れよりも夜に近い景色が流れていく。

過ぎ行く街の灯りをなんとなく見ながら、オレは小春のことばかり考えてた。


本当は、前みたいに面会時間ギリギリまで小春の傍にいたい。

でも、小春の担当医である大塚先生にも言われてる。


『今の小春ちゃんはとにかく安静にしていなければならないから、負担をかけないように君も気をつけてあげてください』


……それくらい、いきなり苦しんだあの日から、小春の容態は悪化してしまった。

面会も本来は家族のみ。

でも、オレは小春の家族の厚意で面会を許されている。

会いに行けば、小春は嬉しそうな表情をするけど……


どれも、以前の小春よりは力のないものになっていた。

会話も以前より辛そうで……


弱っている小春の姿を見ているオレは、毎日が不安で仕方なかった。


小春はオレといて不幸だと思ったことはないっていってた。

でも、実際小春はどんどん悪くなってる。

しかも、オレが小春とちゃんと向き合おうとしてからだ。

どうしたって、オレが影響しているように思えて仕方ない。


< 430 / 494 >

この作品をシェア

pagetop