桜涙 ~キミとの約束~


「次は終点──」


車内にアナウンスが流れて、しばらくするとオレたちの住む駅に到着した。

帰宅するサラリーマンたちの波とは逆行して歩くオレ。

けど、その足取りは重くて……


──ドンッと、肩が誰かとぶつかる。


「あっ、すみません」


謝られた声に聞き覚えがあって、オレは俯いていた顔をあげた。


「……奏チャン」


ぶつかったのは、最近、オレと小春のことを感じっとって、あえて距離を置いてる幼なじみだった。

奏チャンはオレを見て眉をひそめる。


「陸斗。……お前、なんて顔してるんだ」


自分がどんな顔してるかなんて知らない。

分かりたくもない。

ただ、ひたすらに心が重いんだ。


小春が頑張ってる。

だからオレも頑張って、前を向かなきゃならない。

小春を支えてやりたいのに……


心がどんどん沈んで。


息が、詰まりそうだ。


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