桜涙 ~キミとの約束~


なんだか、疲れを感じて。

オレはその場にしゃがみこんだ。


いつか、幼い頃、桜の木を背にそうしたように、路地の壁を背に、膝を立てて。

すると、隣に奏チャンも腰を下ろした。


「それは、お前がそう思い込んでるだけだろう? もっと信じてやれよ。小春を、お前自身を」

「信じてるよ。自分はともかく、小春の事は信じてる。けど、母さんがオレを許さないから」

「……お前のお母さんがお前を許さないんじゃない。陸斗が、お母さんを、何もできなかった自分を許せないんじゃないのか?」

「……オレ、が?」


母さんを、許せない?



『どうして ぼくをひとりにしたの』


『どうして ぼくをそんな目でみるの』


『どうして ぼくを産んだの』



「……そうか……」


そう、だ。

結局オレは、普通の家庭のように愛情をくれなかった母さんを……

オレをひとりにした母さんを許せなくて。


「ハハッ……そうだったんだ……なんだ……そんな、簡単な事だったんだ……」


母さんに、父さんがいなくても大丈夫だと。

オレが傍にいるから、もう泣かないでと伝えきれなかった自分を、助けられなかった自分を許せないんだ。


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