桜涙 ~キミとの約束~
「……なぁ、陸斗」
「んー?」
目の前を通り過ぎていく車の走行音をBGMに返事をすると、奏チャンは切ないようなあったかいような声色で……
「小春のこと、ちゃんと見てやってくれよ」
オレに、お願いした。
「なんだよ急に」
なんて返してはみたけど……本当は、予想できた。
できたから、嬉しくて。
「なんでもだよ」
静かに、少し弱々しく微笑んだ奏チャン。
奏チャンの気持ちは知ってた。
オレが大切にしている子のことを、心から好きなんだって。
もう、何年も前から。
奏チャンが小春に嘘をついたのも、オレの気持ちとか、奏チャンの想いとか、オレたちの関係とかがそうさせたのかもしれないって、なんとなく感じてた。
小春が奏チャンとの事で悩んでた頃、奏チャンがオレを警戒してたのも気付いてた。
そんな奏チャンが、ちょっとでも認めてくれたのかもしれない。
だったら嬉しいけど、そうであった場合、今日までの奏チャン気持ちを考えて──