桜涙 ~キミとの約束~


「オレと一緒にいるのに、他の男の話?」

「えっ、ちが──」

「なんてね」


茶化し、小さく笑うリク。

その笑みに、陰を見た気がして。


「あ、そうだ小春。この前言ってたドラマのDVDだけど」


こうして話題を変えるのも、覚えがある展開。


「……リク、何か、隠してる?」

「……何かって?」

「わかんない。でも、何となくわかるの」


リクが、悲しみを誤魔化す時の癖。

見間違いじゃなければ、今のはとてもよく似ていたから。


どことなく元気がない理由にも、繋がるんじゃないか。

そう思って、リクの返答を待つ。

だけどリクは、からかうように笑って。


「オレ、浮気なんてしてないよ?」


冗談で終わらせようとした。


「そんな心配してない。何もないなら、いいんだ」


何かはあるんだろうと思う。

女の勘というか、幼なじみの勘というか、彼女の勘というか。

とにかく、そんな気はしてた。

でも、リクが話せないというなら、今は無理に聞いても仕方ないとも思うから。


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