桜涙 ~キミとの約束~
「呼吸、今日は調子良さそうだな」
椅子に腰掛けたリクが優しい笑みを浮かべる。
「うん。先生もね、安定してるから今日の手術も乗り切れるよって」
「そっか」
リクは目を細めると「良かった」と胸をなでおろした。
ドナーが見つかって、両親も安心してくれて。
手術が終わって安定さえすれば、リクとまた一緒に過ごせる。
いいこと尽くめで様々な不安よりも幸せが勝る今の私だけど……
ひとつだけ、気がかりなことがある。
「……ねえ、リク」
名前を呼ぶと、リクは声にせず、首をかしげることで言葉の続きを待っていた。
優しさの滲んだ表情に促されるように、私は口を開く。
「あのね、奏ちゃんから、まだ連絡がないの」