桜涙 ~キミとの約束~
私は少しの恥ずかしさを堪え、リクの手をとって心臓へと導く。
そっと、リクの手の体温が布越しに触れた。
トクン、トクンと脈打つ鼓動。
リクは瞼を閉じて、私の中で奏でられている音を感じていた。
「オレ、この鼓動をちゃんと覚えておくよ」
小春を今日まで支えてくれていた鼓動だから。
そう言って、リクは微笑んだ。
「ありがとう。……私、頑張ってくるね」
伝えると、リクはしっかりと頷いてから声にする。
約束のこと、今はいいよ……と。
今はただ、生きて。
「オレの隣で、明日も明後日も、来年も、十年後も笑ってて」
願うのは、それだけ。