桜涙 ~キミとの約束~


意識はまだどこか曖昧だけど、成功したという言葉に涙が溢れて止まらない。


誰かの命が、私を生かしてくれた。


私に今日を、そして、今日から繋がる明日を、未来をくれた。



リクの隣に寄り添える、奇跡の日々を。



ドナーと、そのご家族に深い感謝を。


伝えきれないほどのありがとうを。



また涙がこぼれると、再び耳に届く先生の声。


現在いる場所は集中治療室。

あとは状態が安定していくように頑張ろう。


大塚先生の言葉に私はまた頷いて……


「せんせ……ありがと……ございました」


酸素マスクをつけたまま伝えると、先生は笑みを濃くして答えてくれたのだった。


それから、私はまた睡魔に襲われて瞼を閉じた。

きっと麻酔が効いてるのだろう。

手術の前、二週間ほど麻酔がかかった状態になるから、気がついても意識は朦朧とするだろうと言われていたのをなんとなく思い出しながら、私は抗うことなく眠りについた。


< 470 / 494 >

この作品をシェア

pagetop