桜涙 ~キミとの約束~
何度目の目覚めだったのか。
誰かに呼ばれた気がして、私はゆっくりと目を覚ました。
昼なのか、夜なのかもわからない。
薄暗い病室。
ただひとつだけわかるのは、私を優しく見守る人の存在。
朦朧とした意識の中でも、それが誰なのかは不思議とわかった。
「……奏ちゃん……」
名前を呼ぶと、彼は優しく微笑む。
「良かった……連絡、なかったから……」
心配だったの、と口にすると、奏ちゃんが申し訳なさそうに眉を寄せた。
──ごめん。
そう唇が動いた気がして、私は僅かに首を横に振る。