桜涙 ~キミとの約束~
窓の外には夕暮れの橙色。
暖かさの感じられるようなその色が、奏ちゃんからもらった言葉の温かさに似ているかも……なんて考えていたら。
「……なぁ小春、退院したら奏チャンに会いに行こう」
静かな声で、リクが提案してきた。
そこにある微かな違和感に首を傾げた私。
「退院、したら?」
「うん……奏チャンが待ってるからさ。小春の元気な姿、見せてやろう」
笑みを浮かべたリクの顔が、一瞬切なく歪んだ気がして。
泣き出してしまいそうにも見えたその表情に、手術前から感じていた不安感がゆっくりと頭をもたげる。
どうして退院したらなのか。
連絡がなかったことといい、お見舞いにはしばらく来れない理由があるという事かな?
よくわからないけど、元気な姿を見せたいとは素直に思えたから。
「うん、早く退院して、奏ちゃんを驚かしに行こうね」
そう告げると、リクは淡く笑みを浮かべ頷いた。