桜涙 ~キミとの約束~


「あっ、リク!」

1-Bに辿りついた私は、リクの姿を見つけるなり駆け寄った。

リクは驚いたようにパチクリと瞬きをして。


「どした?」

「英語の辞書、貸して欲しくて。ある?」

「うん、ある」


リクは頷くと、教室の後ろにある自分のロッカーから分厚い辞書を取り出して、私の手に乗っけてくれた。


「はい」

「ありがとうリ──」


リク、と彼の名前を声にするはずだった。

けれど、突然視界がぐにゃりと歪んで、私の体から力が抜けていく感覚に襲われ……


「わ……小春っ……」


私は、目の前に立っていたリクに支えられ、かろうじて倒れずにすんだ。


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