桜涙 ~キミとの約束~
その後すぐ、病院を出た車が向かった先は奏ちゃんの家。
先に家に戻っていると言って私とリクを見る両親の顔は、どこか気遣うようなもので。
漠然と、嫌な予感が私の心に広がっていく。
どうして、退院後に向かう場所が、自分の家よりも先に奏ちゃんの家なのか。
確かにリクは会いに行こうと言っていたけど……
重大な事が待っている。
そんな予感が押し寄せて、私はリクの羽織るジャケットの裾を掴んだ。
気づいたリクは、何も言わずに少しの笑みを浮かべてから、奏ちゃんの家のチャイムを押す。
迎えてくれたのは奏ちゃんではなく、奏ちゃんの両親だった。
「小春ちゃん、退院おめでとう」
私服姿の奏ちゃんのお父さんがお祝いの言葉をくれて。
「ありがとうございます。あの……」
奏ちゃんはいますかと聞こうとしたけど、それは奏ちゃんのお母さんの声で遮られてしまう。
「どうぞ上がって」
スリッパを並べられ、私とリクは促されるままにお邪魔すると、スリッパを履いて奏ちゃんの部屋のある二階へ移動した。
いつも閉まっている奏ちゃんの部屋の扉は、開いていて。
先に部屋の入口に立ったリクが声を出す。